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久坂部用の『いつか、あなたも』

『いつか、あなたも』
久坂部羊、実業之日本社、2014年9月

(実業之日本社 http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53650-7
内容紹介:最期までこの人に寄り添う。
在宅医療専門クリニック看護師のわたし(中嶋享子)と新米医師の三沢、クリニック院長の一ノ瀬らが様々な患者本人と家族、病とその終焉、そして安楽死の問題にも向き合う。カルテに書かれることのない医療小説、六つの物語。


 久坂部の小説の中では書いた意図が一番分かりやすく素晴らしい本でした。この本を読んで、やっと、著者の人間性を理解出来たように感じています。

 久坂部は2001年から14年まで、在宅医療が専門のクリニックに非常勤医師として勤め、多くの患者を診察した経験がある。その経験をもとにした実話だという。むろんノンフィクションではなく小説(6短編)の形をとる。

 一看護師の視点から、その末期患者とその家族及び医療者による在宅での看取りに伴う切実な問題が詳細に描かれている。取り上げられた末期患者は、すい臓がん、重症アルツハイマー病、多発性骨髄腫、卵巣がん、統合失調症(疑)、ALS(筋委縮性側索硬化症)の6症例。

 老いと死は誰しも避けられない。病はしばしば無慈悲に襲い掛かる。生命の尊厳を最後まで守ろうとする患者・医療者双方の苦悩の姿が描かれる。

 死後処置で「綿をつめる」意味がよく分かった。

 老々介護の現実、告知はすべき?、家族の苦悩、出口の見えない精神疾患、ALSの痛みと安楽死、などなどどれも重たいが、「いつか、私も」どれかに直面したら逃げ出すわけにはいかない。しかし、何ができるのかと??

 「いつか、あなたも」必ず直面する病苦と死について書かれた本と思っていたら、作中では全然違う「のろいの言葉」だったので吃驚でした。


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