SSブログ

小倉昌男 祈りと経営 [読書]

『小倉昌男 祈りと経営
ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』

森 健、小学館、2016年1月

本の内容(小学館のHP http://www.shogakukan.co.jp/books/09379879
「宅急便」の生みの親であり、ビジネス界不朽のロングセラー『小倉昌男 経営学』の著者として知られる名経営者は、現役引退後、私財46億円を投じて「ヤマト福祉財団」を創設、障害者福祉に晩年を捧げた。しかし、なぜ多額の私財を投じたのか、その理由は何も語られていなかった。取材を進めると、小倉は現役時代から「ある問題」で葛藤を抱え、それが福祉事業に乗り出した背景にあったことがわかってきた――。

著者は丹念な取材で、これまで全く描かれてこなかった伝説の経営者の人物像に迫った。驚きのラストまで、息をつかせない展開。第22回小学館ノンフィクション大賞で、賞の歴史上初めて選考委員全員が満点をつけた大賞受賞作。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
森 健
1968年1月29日、東京都生まれ。ジャーナリスト。92年に早稲田大学法学部卒業。在学中からライター活動をはじめ、科学雑誌や総合誌の専属記者で活動。96年にフリーランスに。2012年、第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。15年、『小倉昌男 祈りと経営―ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』で第22回小学館ノンフィクション大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 久しぶりのノンフィクション、著者も全く知らなかったのに読みたいと思ったのは毎日新聞(2016年3月6日)の「今週の本棚・本と人」を読んでのことです。そのままコピペします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 誰もが知っている人の、誰も知らない話を書く。評伝の醍醐味(だいごみ)を堪能させてくれる。

 「小倉さんについて書かれた本はたくさんあって、当初は本になるという確信はなかったんです」。主人公は官の規制に挑み「宅急便」を創設。物流革命を遂げた名経営者として知られている。関連書は確かに多い。晩年、障害者福祉にばく大な私財を投じたことも、一部で知られてはいる。「でも、その理由についてハッキリ書かれたものがなかった」。さらに最晩年の行動も謎だ。80歳の高齢に加え病気を抱えてなおアメリカに渡り、そこで永眠した。「なぜそこまでして渡米したのか」という疑問が残った。また小倉をよく知る人たちに取材すると「(それまで小倉を書いた本は)ちょっと違うんだよね」といった感想を聞いた。「語られていない言葉、書かれていない事実がある」と確信を持った。

 北海道、静岡、新潟。そしてアメリカ。行くべき場所に行く。会うべき人に会う。基本だがなおざりにされがちな、ノンフィクションの手順を踏む。ロードムービーをみるようであり、謎に迫っていく過程はミステリーのように読者を引きつける。

 最愛の妻の死。「心臓の発作で急逝」したはずだったが、事実は違った。家庭内のトラブル。他人にはおよそ話しそうにない家庭内の問題が、当の家族の言葉から明らかになっていく。

 東日本大震災のあと、100近い家族に取材。それをもとに発表した『「つなみ」の子どもたち』で2012年、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。相手の心を開かせ、尋常な聴き手では引き出せないような話を得る取材力には定評があり、今回も十全に発揮された。第22回小学館ノンフィクション大賞を受賞。選考委員5人の満場一致、しかも全員満点と前代未聞の評価を得た。

 「『つなみ』は子どもたちがもらった賞。今度は自分が、という気持ちはありました」。出版冬の時代と言われて久しい。ことにノンフィクションは氷河期のように冷たく、暗い。しかし熱を発する確かな光源があることを、本作で教えてくれた。<文と写真・栗原俊雄>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 期待したとおりの素晴らしい本でした。

 佐川急便は違法営業の摘発を逃れるため金丸信に多額の献金をしていたが、クロネコヤマトは政治家は使わず行政訴訟をしてまで官僚と闘ってきた、というような事柄が素直に納得出来る。ただ小倉が「宅急便」のシステムを作り上げる動機の一つに佐川急便の「飛脚の精神」があったことなど面白いなと思う。
 宅急便のシステムを完成させ大成功した実業家が引退した後、福祉事業にのめり込む、小倉のその動機を探るのが本書の主題だった。
 多数の関係者に取材し、最愛の妻、娘がいわゆる「鬱病」であったことを明らかにしている。読むのがつらい。それでも最後まで読まされる。敬虔なカトリック信者が自殺にまで追い込まれる苦悩、80歳になって死を見据えての渡米。あまりに多くのことを考えさせられ読後感が重い。

img336.jpg

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。